〔序章〕〜rabbit rider history〜

それは、世界がまだ山に囲まれていて

生き物たちが毎日本当にのんびり暮らしていた時代

 急ぐことのない彼らに

“乗りもの”という概念が存在しなかった時代の話に発端する。

そのむかし、世界があまりにものんびりしてたので生物たちも調子を合わせ、とってものびのびと育っていた。

のびのびしてたら サイズも すごくのびのびした大きさにみんな成長した。

 

秘訣は“あせらないこと”。

 広い海の中で、のびのび大きくなった生き物は世界で一番大きくなった。

調子に乗って彼らはこぞって陸上デビューを試みる。

ところが陸の上だと思ったよりも体が重くって、

我先に、と、陸上デビューに勤しんだ者は動けなくなって、死んだ。

それ以来 仲間たちは水の中に引きこもった。

一方、陸上ではトカゲたちが一番大きなのびのびサイズへ成長をとげた。

もともと小さかったトカゲは、一番大きいのびのびサイズになったものだから急にえばりだし、

それぞれが巨大トカゲたちの中でも誰が一番強いのか、とかが気になりだした。

連日連夜最強トーナメントを開くほどに白熱していた。

あわゆくばチャンピオンの座を奪い取ろうと巨大トカゲたち同士が闘い合っていたら、

最後の一匹を残し今度はみんな死んでしまった。

そして、それから何億年も時が流れても、世界はまだ山に囲まれていた。

生き物たちはやっぱり毎日のんびり暮らしていた。

 「あせって生きると早死にする」ってジンクスがあったので、やっぱりみんなのんびりしていた。

のびのび暮らしていたので、

やっぱり生き物たちのサイズも すごくのびのびした大きさが常であった。

そんな時代があった。

でもそんな のびのびライフも永遠には続くものではなかった。ゆっくりと、変わっていく。

人間も それなりにのびのびスローライフ暮らしをしてたのだけれど、

次第にもっと短時間で効率のよいことは無いかと色々と考え出した。

畑が生まれた。お金が生まれた。工場が生まれた。時計が生まれた。

村から町が生まれ、“都会”が生まれた。

人間は以前ほど のびのびしなくなった。 

のびのびサイズの生き物たちはのびのびしない人間に飼われたり、

住む場所を追われたりして、

大半の生き物たちは昔みたいにのびのびすることができなくなってしまった。

人の息のかかった森では生き物たちは生きていくためにみるみる小さくなった―――。


太古の昔より、人類の永遠の憧れとされる月に住んでいたという、ウサギ。
ウサギ達が毎晩そこで狂ったように餅をつき続けているのは あまりに有名な話。

しかし、文明も発達していない昔に 遠く離れたこの惑星から
人間が月に存在する小さなウサギを確認できるだろうか…?

そう、彼らウサギ達の祖先は ものすごく巨大であったのだ。
星と星の間を肉眼で確認できるほどに。


現在のウサギは、彼らの祖先が地球に舞い降りて
環境に適応するうちに小さくなっていったと言われている。

そしてこの世界にもまだ、祖先の姿から より近いウサギが存在している。
現在では希少な成長すると牛とほぼ同じサイズにもなる巨大なウサギが。

人間たちの住む世界がまだ山に囲まれていた頃、

人々の産業の発達の矛先に“乗り物”という概念が存在しなかった頃、

何を思ったのかその頃、 山に溢れる巨大ウサギに乗ろうと考えた

 ひとりの人間から歴史は始まった――…

【用語解説】兎ライダーとは?>>

※この物語は言うまでもなく浦沢の個人的妄想フィクションです。Copyright (C) 2007 浦沢, All rights reserved.

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